夏時間の庭
2009年 08月 16日
移転した『チネ・ラビータ』は,以前の場所に比べると仙台駅からさらに最寄りとなり,また座席にもゆとりも有り,3シアターと広くなったため良かったです。ただし,1階のBIVIはいただけないというか、騒がしいと感じがしたのは,私だけだろうか?
さて,本題の『夏時間の庭』 以下,ネタバレであり,私の感想。
オルセー美術館,開館20周年記念事業としても制作された映画です。美術作品に興味ある方は,見るとよいでしょう。実在した方の話なのかよく分かりません。
ちょっとした美術コレクターである母が他界し、3人の兄妹で資産を分ける話。簡単にまとめると、上記の通りなのだが、家族の歴史や思い出の詰まった家や家具,美術品をどうするか?と,年老いた母親は長男に,画家として名声を放った旦那の作品や価値のある品々について、「売ってしまいなさい!」と伝え亡くなります。長男は困惑します。思い出の品々を売却するよりも,家族の思い出が残った場所を残しておきたいと,生前母に伝えます。しかし,母は「売ってかまわない。」とのこと。
決して仲が悪い兄妹でもなく、兄妹は皆優秀です。長男は大学教授、次男は異国の上海で事業を立ち上げ軌道に乗りかけている、妹はアメリカでキュレーターとして活躍しています。世界にまたがって生活している兄妹たちは母親の誕生日には,家族総出で必ず集まっては,母をお祝いするといった設定でした。
母親の死後、さっそく兄妹で会議をひらきます。兄は、家族の歴史や思い出の品々が残る家や家具等、「そのまま残したい!」と提案します。一応賛成はする弟妹。しかし、海外で生活している弟妹は、「可能ならば現金が欲しい」と提案します。結局、長男は家屋敷共々売却し、一部の品々はオルセー美術館に寄贈するのです。家政婦は,生前花を生けるさいに生えた花瓶をもらいます。この花瓶も,そこそこ値打ちはあるものの,家政婦はそんなことも知らず,ただ「きれい!」「奥様が,好んでいた品物」として受け取ります。一通り,兄弟で思い出の品々をもらい,一部はオルセー美術館に寄付,そして売却します。
オルセー美術館に展示されている,母の美術品は,単に美術品として展示されています。おもいでもへっちゃくれもあったもんではありません。観光客は,「あぁ,ードームの作品ね・・・」程度で素通りしていきます。下手すると,見ようともしません。ちょっと,長男はしょげます。
売却する直前に,あることが起きるのですが・・・。その後は・・・観てください。
いずれにせよ、「遺産」「相続」は大変だ。最終的に,美術品の場合,相続税がかかるだろうから,寄付といったかたちが無難なのでしょうが,そこに美術作品としての価値を見いだすことは難しいでしょう。この映画で,一番よい方法は?と考えてみた。やはり,資産のある方は,生前作品の資料や,形見分けの分類をしっかりつくっておくべきである。残された者が混乱する。困惑するでしょう。
母上と同伴した手前、遺産の話にはなりませんでしたが、長男の判断を考えた私なのでした。映画のネタというか、カメラワークとして,もう少し美術作品をじっくり見せるような展開も欲しかったな・・・。ちょっとテンポ早すぎたかな?