レオニー
2011年 01月 09日
世界的な彫刻家イサム・ノグチは,名前だけは聞いたことがあるでしょう。この映画は,イサム・ノグチの母であるレオニー・ギルモアの半生を描く伝記映画である。
世間体や時代に流されずに生きた女性は,堂々としてている。私はこの主人公である『レオニーギルモア」のことについて,知らなかった。このサイトを読んだ。やはり凛々しく,そして毅然とした横顔が印象的である。
1901年のNYの下町。編集者になることを夢見ていた女性レオニーは,日本人の文学者であり詩人の野口米次郎と出会った。詩集の出版に際し,米次郎は成功を収めた。そして2人は愛し合うようになり,レオニーは妊娠をした。レオニーが妊娠した頃時代はロシア戦争の勃発前。アメリカで生活していた日本人はいい顔をされず。また,子どもができたことにあまり好意を持たず,米次郎は日本にさっさと帰国してしまう。シングルマザーとなった,レオニー。
レオニーは田舎にひっこむが,米次郎から日本へ来るよう催促手紙を受け取る。恐らく,20世紀初頭に,シングルマザー。そして時代が時代だから困窮していたことだろう。レオニーの自宅も決して裕福とは思えない家で,幼いイサムを育てている様子が映っていた。映画の中では,レオニーは米が戻ってくるを信じ,名前を付けられずに『ヨー』と呼ばれていたシーンもあった。最終的に,レオニーは日本に行くことを決意した。日本語も話すこともできぬまま異国の地に行く。もちろん,レオニーの母親は猛反対であり,最後まで引きとめるのだが日本へ。
日本(横浜)に着いたレオニー。アメリカと日本の文化の違い,英語で会話するも,周囲には英会話できる者もいない。辛うじて米の知り合いといった軍人や文化人は英会話をすることができ た。いずれにせよ,当時の日本で海外に関心をもいなち,英会話ができるあはほんの一握り程度だったことだろう。
一方的に帰国した米次郎がレオニーを呼び寄背もた理由は,日本で愛人として彼女を囲うためだった。そのため,レオニーの結婚観に違いがあり,レオニーは憤慨する。もちろん米のレオニーに対する罪悪感はもっていない。当時の平均的な富裕層の日本人男性の姿として淡々と描かれるのが印象的なシーンである。
最終的に,米次郎のもとを離れ,異国の地でシングルマザーとしてあゆみ出すレオニー。映画には,津田梅子,小泉八雲の妻(セツ)をはじめとした,当時の日本で革新的な女性たちも登場する。
イサム・ノグチという世界的に有名な彫刻家でありデザイナーを,女手一人で妥協をすることなく育てあげた。11歳の子どもに「我が家を設計しなさい」と,我が子を信じて大工を3人雇い家を建ててしまう。またこの家を建てるにあたり丸い窓をつくると富士山が見えるといった,イサム・野口の審美眼もすごいと感じた。そして,14歳の子供を一人で「よい教育を受けるならば」と,イサム一人を渡米させてしまう。
レオニーは本当に強い女性だと感じた。自分の境遇に嘆いたり,男性にもむやみに頼りもしない。自分の道を自分で開拓した。本当に強く聡明な女性レオニー。関心のある方は見てほしい映画である。
<蛇足>エンドロールで札幌にあるモエレ公園内で子どもたちが楽しく遊んでいるシーンもお奨め!
★レオニー翻訳プロジェクト