パウル・クレー 終らないアトリエ 東京会場
2011年 06月 15日
さて,ワタリウム美術館後,東京国立近代美術館で開催されていたクレーの展覧会『終わらないアトリエ』へ。
クレーは日本国内にもファンは多い作家の一人です。混み混みとはいわずとも,何処となく来館者は多かったように感じました。作品の保護もあって,ややひんやりとした館内でした。今後出向く方は,軽く羽織るものがあるとよいでしょう。
クレーの絵は,とても繊細な作品もあれば,大胆な作品も発表しています。かすれたような線や細かく丹念に描かれた作品は神経質そうな印象すら受けます。クレーは,4000点あまりの膨大な作品を描きました。銅板したものに彩色を施した絵も多く,何故これだけたくさんの絵を描いたのか,理解することができるはずです。
今後足を運ぶ方のために記します。この展覧会では,クレーの作品を理解するための,プロセスを紹介しています。DVDによる短く簡潔な紹介です。4か所だったかな。わかりやいです。しかし,実演のDVDはディスプレイは26インチ程で,混雑していると人の頭で観ることができないかもしれません。プロセス1(油彩を転写する技法)のところなぞ,部屋のくぎれのような場所で,何で人だかりができているのかなぁ?と私は感じ近づいて行った次第。観ることはできましたが,平日でないと混雑していることでしょう。
プロセス1 写して/塗って/写して 油彩転写の作品
プロセス2 切って/写して/貼って/切断・再構成の作品
プロセス3 切って/分けて/貼って/切断・分断の作品
プロセス4 おもて/うら/おもて 両面作品
過去/進行形 ”特別クラス”の作品たち
プロセス3を見ていて感じたことは,クレーは制作した作品を切って,あえて2つの作品としていたこともあったこと。とすると,作品の最終的なイメージを持たず描いていたということなのだろうか?と疑問。今後,クレーの作品を紹介する時,様々な描き方,発表の仕方があることにも考えていきたいです。
”特別クラス”の作品とは,自作をある時点から8つのカテゴリーに分け,それ以外に非売として手元に残した作品だそう。これらの作品は,自身や家族への思いやクレーにとって制作の指標となるものだった事を知りました。現在もこれらの作品群は、クレーの「遺産コレクション」としてパウル・クレー・センターのコレクションの基礎となっているそうです。私が好む作品の多くは,特別クラスの作品が多い事に気付きました。
展示作品は,約170点とのことですが,大半は水彩やペン画が多いです。プロセス1にみる,油彩転写に鉛筆や水彩を重ねるといった具合で,本格的な油彩の作品はそれ程多くはありません。油彩作品に期待して出むくと,ちょっとがっかりする方もいるかもしれません。しかし,クレーの色遣いが好きな方や,制作過程をたどっていく本展の内容はクレー作品に対する理解を深めるためには非常に有効な展覧会だと思いました。
最後に,クレー。色がとてもきれい。是非会場で色を形を,構成を堪能してほしい。